ベラルーシのキャッシュレス決済事情

1、ベラルーシについて
ベラルーシは旧ソ連邦を構成していた共和国の一つであり、ソ連崩壊と共に独立した国家です。
ロシア、ウクライナ、ポーランドなどに隣接しています。
人口は約940万(注1)と少ないですが、近年はIT産業が盛んな国として注目されています。
べラルーシの経済省は、2023年頃までにGDPにおけるIT部門の割合が約10%に成長するという予測を立てています。昨年時点でのIT部門の割合が5.5%であった為、10%は約2倍の値です。(注2)
ベラルーシ発の有名なIT企業の例としては、Wargaming社(World of Tanksなどのミリタリーゲーム開発会社)やEPAMシステムズ(ソフトウェア開発、ITコンサルティングの専門会社)などが挙げられます。
注1;外務省「ベラルーシ共和国」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/belarus/index.html
注2;「ベラルーシのGDP内のIT部門の割合が2023年頃までに約10%成長することが予想される」(ロシア語、ベラルーシ語、英語等)
2、インタビュー
今回はベラルーシの首都ミンスク出身のボグダンさん(22歳)にインタビューを行いました。彼はベラルーシ国立情報科学・電気通信工学大学を卒業後、ベラルーシのIT企業に就職し、現在は楽天でソフトウェアエンジニアとして働いています。
社内公用語が英語である楽天では、多くの外国出身のITエンジニアが在籍しています。
楽天のエンジニア採用ページ
https://corp.rakuten.co.jp/careers/engineering/
また、ロシア語圏の人々は以下のようなサイトを使って求人を探すことが多いようです。
HeadHunter
https://hh.ru/search/vacancy?area=1&fromSearchLine=true&st=searchVacancy&text=it
ヤンデックスラボータ
https://rabota.yandex.ru/moskovskaya_oblast/vakansii/?text=it
有名な求人サイトとしては他にもLinkedinが挙げられますが、ロシアではこのサイトを利用することができません。これは、政府の個人情報保護規制によるものです。同じ理由でロシアではLINEの利用もできません。ただし、VPNアプリを使用すると、これらのサービスを使用することができます。
早速インタビュー内容に移ります。
Q 何故IT関係の仕事に就こうと考えたのですか?
A 大学在学中にソフトウェア開発に興味を持ったことがきっかけです。その後、3年生で始めたIT企業のインターンを経て、インターン先の企業に就職しました。
Q ベラルーシはIT産業が盛んな国であると言われていますが、それは何故だと思いますか?
A 実際に、IT産業はベラルーシの主要な産業の一つです。
ベラルーシのIT業界が発展した理由はIT企業にとって好ましい環境下であったことと、ベラルーシ市場に適したビジネスモデルがあったことです。
ベラルーシのIT企業の大部分はベラルーシよりも遥かに給料水準が高い西側諸国を注文先とするアウトソーシングモデルを利用しています。
ベラルーシのプログラマーは西側諸国のプログラマーよりも人件費が安い為、西側のパートナーはベラルーシの企業に支払いをすることで、より利益を得ることができます。
また、ベラルーシの企業は外国の注文先のプログラマーよりも遥かに少ない給料をベラルーシのプログラマーに支払っています。
結果的に、企業が良い収入を得ることになるのです。
Q ベラルーシの平均収入はいくらくらいですか?
A 全体の平均月給は約500ドル(注3)ですが、IT技術者(ソフトウェアエンジニア)の平均月収は約2000ドル(注4)です。
注3;ベラルーシの平均収入(ロシア語)
https://myfin.by/wiki/term/srednyaya-zarplata-v-belarusi
注4;IT業界の収入(ロシア語)
★同じヨーロッパであってもスイスのIT技術者(ソフトウェアエンジニア)の平均月収は約8000ドル、ドイツは約5000ドルです。
また、アメリカは約7000ドル、日本は約3500ドルです。
参考;「世界のIT技術者の給与ランキング」
Q 今、全世界でキャッシュレス決済が普及しつつありますが、ベラルーシはどうですか?
A ベラルーシでは、銀行、お店、地下鉄など至る所でキャッシュレス決済システムが使われています。しかし、バス、トロリーバス、路面電車などではまだ普及していません。切符は現金でしか買うことができない為、手持ちの現金がなく、カードしか持っていない時、運賃の支払いが出来なくなることがよくあります。
Q ベラルーシではどのようなキャッシュレス決済システムが人気ですか?
A ベラルーシには「ベルカルト」というカードがあります。これはVisaやMasterCardのようなもので、ベラルーシ国内のみで使われています。現在ベルカルトはベラルーシにおいて、VisaやMasterCardに並ぶシェアを占めています。(注5)
注5;銀行支払いカード市場(ロシア語)
https://www.belta.by/infographica/view/rynok-bankovskih-platezhnyh-kartochek-19706/
スタンダードタイプのベルカルト↓
ベルカルト公式サイト(ロシア語、ベラルーシ語)
また、「統一決算情報空間」という電子決済システムもあります。このシステムを使えば瞬時に支払いをすることができます。公共料金、学費、インターネットショップを含む様々な料金の支払いを行うことが可能である為便利です。
統一決算情報空間公式サイト(ロシア語、ベラルーシ語)
★ロシアにおけるキャッシュレス決済事情
ロシアには「ミール」という銀行系カードがあります。このカードはロシア独自のシステムで運営されている為、何か国際的な問題が起きた際にも、問題なく使うことができます。
ミールはロシアのみならず、ベラルーシやカザフスタンでも使われています。去年の時点でミールはロシアにおける銀行系カード市場の中で22%のシェアを占めています。(注6)
注6;ウラジーミル・コムレフ「ロシアの銀行系カード市場の中でミールは22%を占めています。」(ロシア語)
ロシア郵便銀行が発行しているミールカード↓
ミール公式サイト(ロシア語)
また、「ロシア連邦国家サービスポータル」というシステムにおいてはインターネット上で地方自治体の手続を行うことができます。このポータル上では納税や罰金などの公的な支払いの電子決済が可能となっています。
ロシア連邦国家サービスポータル公式サイト(ロシア語、英語)
https://www.gosuslugi.ru/foreign-citizen
Q ベラルーシではどの年齢層がキャッシュレス決済を利用しているのですか?
A 20代から40代位ですね。
Q コロナウイルス流行を受けて、ロシアでは処方箋のオンライン受け取りが可能になるなど、身近な制度に変化が見られます。ベラルーシでは何か変化はありましたか?
A 大きな変化は知りません。まあ、ルカシェンコ大統領はどのようなコロナ政策も実行しない主義で、始めからコロナウイルスを否定していたので、これから何か変化が起きるとは思えませんね。
現在ベラルーシにおいては、今年の8月に実施された大統領選挙の結果に反対する抗議活動が続いており、内政に混乱が生じています。
参考;「ベラルーシ大統領就任式 選挙不正訴える反政権派は非難」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200924/k10012631851000.html
3、ベラルーシのキャッシュレス化のこれから
ベラルーシのキャッシュレス決済事情をインタビューする中で、ベラルーシの課題が見えてきました。ベラルーシにおいては、公共交通機関でのキャッシュレス決済システムの導入が課題です。最近、ベラルーシにもSUICAやPASMOのような公共交通機関で使用可能なICカードが取り入れられたそうですが、このICカードは公共交通機関以外では使用できません。将来的には、このICカードの機能が拡張されるかキャッシュレス決済に対応したシステムが公共交通機関に取り入れられることが予想されます。隣国のロシアでは全国的に、公共交通機関においてキャッシュレス決済システムが導入される動きが進んでいます。
〇参考サイト
「ノヴォシビルスクのバスは銀行カード決済を導入した」(ロシア語)
https://ngs.ru/text/transport/2020/10/22/69513203/
「クラスノダール地方の公共交通機関はキャッシュレス決済システムに以降する」(ロシア語)
https://www.kuban.kp.ru/online/news/4045599/
「北カフカス連邦管区においてキャッシュレス化が進んでいる」(ロシア語)
https://tass.ru/ekonomika/9931963

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