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ロシアの移民制度

ロシアの移民制度

 ロシアへの入国のためには、目的や期間に関わらずビザの取得が必要です。
ロシアでの外国人の地位は、a.一時滞在(観光ビザ、業務ビザに基づくもの)、b.一時居住(期間限定での長期滞在:~3年)、c.定住の3つに分かれます。今回は、bとcの違いを比較します。

2018年に連邦法「ロシアにおける外国人の法的地位」、及び関連法が修正され、b.一時居住とc.定住の許可発給の簡素化が発表されました。

b. 一時居住(期間限定での長期滞在:~3年)
 一時居住許可とは、外国人が3年間ロシアに住み、働くことを認める書類です。申請してから受理されるまで、約半年かかります。一時居住許可を取るためには Разрешение на временное проживание(РВП/一時居住許可証)が必要です。これは、後に紹介する居住許可証を得るための第一段階です。
 ロシア政府は毎年、各連邦構成主体に「クオータ」と呼ばれる、一時居住許可交付可能枠を与えます。2021年は、ロシア全体で39,325の枠が設けられました。その枠内であれば、テストに合格し、健康診断書を提出すると、一時居住許可を申請することができます。しかし、この枠は年々減少しています。移民が増えることによって、ロシア国民の雇用が奪われ、失業率が増加していることと関係しています。
 ロシア人が配偶者にいる場合は、クオータの枠数に関係なく申請をすることができます。しかし、受理されるかどうかは他の移民と条件は変わりません。

○2018年連邦法修正による変更点
(条件)
・クオータ制度枠外
・ロシア生まれ
・ロシア国籍者と結婚し、居住地がロシア
・連邦政府規定の一定額以上の投資を行う
以上の条件を満たす人を対象に、一時居住許可発給の審査期間が6ヶ月→4ヶ月に変更されました。

c.定住
 これまでは5年ごとに更新が必要でしたが、その有効期限を無期限にすることが発表されました。
無期限の定住許可を保持するためには・・・
・定住許可取得日から1年経過して2ヶ月以内に自身の居住地のロシア内務省地方局に居住を通知
・以降毎年通知
かつ
・5年ごとに本人が出頭
→2年連続で居住通知を怠ると、定住許可が取り消されてしまいます。

Вид на жительство (ВНЖ/居住証明書)について
居住証明

 居住証明書とは、外国人に永住を認める書類で、国籍以外では最長のビザです。メリットとしては、ロシア国内のどこでも働けることや、その他のビザの場合に必要なイミグレーションカードが不要になることなどが挙げられます。一時居住許可を取得した半年後から、申請が可能になります。
~必要な書類~
・申請書×2
・個人を特定できる書類
・証明写真×2
・HIVに感染していないことを示す証明書
・自分と家族を最低限の生活費の範囲内で養う能力があることを確認する書類
・住宅を所有している証明書
・ロシア語が堪能であること、ロシアの歴史や法律について知識があることを示す書類
・申請日より3ヶ月以上前に犯罪歴がないことを証明するもの

 居住証明の申請は手間と時間がかかります。実際に居住証明書を持つ方に、申請時に大変だったことを伺いました。
~大変だったこと~
・移民局それぞれで言っている内容に差異があり、何度も足を運ばなくてはならなかったこと
・申請内容が統一されていないこと
・書類が煩雑であること
・申請過程に不明な部分が多いこと
・日本で用意する書類とロシアで用意する書類の内容の齟齬がないようにすること(日本で用意する書類に不備がある場合、日本に帰国しなければならなくなります)
・自分一人で手続きを完結できないこと(居住証明が受理された3日以内の住民登録の際、大家さんなどに頼む必要がある)

 2015年以降、居住証明、一時居住許可、パテントを取得するためにはロシア語、ロシアの歴史、ロシア法基礎のテストを受験しなければいけません。難易度は、取得する資格や期間によって変わります。

以下のような問題が出題されます。
~例題(ロシアの歴史)~
Q. Великий русский учёный – это…. (偉大なロシアの学者は…..)
А) П.И. Чайковский          (A. チャイコフスキー)
Б) М.В. Ломоносов          (Б. ロモノーソフ)
В) А.П. Чехов            (В. チェーホフ)

答えБ)ロモノーソフ

Q. СССР(Советский Союз) был создан в…. (ソビエト連邦は…..年につくられた)
А) 1905 году            (1905年)
Б) 1922 году            (1922年)
В) 1961 году            (1961年)

答え Б)1922年

*試験が免除される場合
1. 高度熟練専門家
○技術革新特別経済区*¹居住者で58,500ルーブル/月以上の所得がある人
○セヴァストーポリ、クリミアで働く客員教授、研究者で83,500ルーブル/月以上の所得がある人
○医療、教育、科学分野の高度専門家や、国際医療の領域での活動に従事していて、100万ルーブル/年以上の所得がある人
2.スコルコボ・イノベーションプロジェクトに参加している企業
モスクワにあるイノベーションセンター。①エネルギー効率、省エネ、②核技術、③宇宙技術、④機器および医療品開発分野の医療技術、⑤戦略的コンピュータ技術、プログラム開発の5つの分野の研究活動が行われています。

*¹技術革新特別経済区
科学技術製品の創造と販売、それらの産業応用のための革新的な活動を展開するために設立されているものです。現在は以下の地域がこの経済区に該当します。

○パテントとは
 ビザなしでロシアに入国できる国からの外国人が労働許可をもらうために申請する書類です。パテントは、申請をした地域でのみ有効であり、その他の地域で働きたい場合は別のパテントが必要になります。また、2016年から職業が明記されるようになり、その職業以外で働くことはできません。期限は最長で1年となり、1ヶ月単位で申請することができます。1年を超えない範囲であれば延長することが可能です。パテントを持つ人の義務として、毎月、来月分の税金を前払いする必要があります。金額は地域によって異なります。

最後に一時居住と居住証明の主な違いをまとめます。

一時居住と居住証明の違い

○参考資料
ロシア経済開発防衛省
Газета.ru
MIGRANT MEDIA.RU
mos.ru
ロシアテストセンター
JETRO

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