ロシア人旅行者の動向
こんにちは。はじめまして。新人の大渡と申します。主に旅行関係のコラムを担当させて頂きますので、皆様どうぞよろしくお願い致します。今回は、ロシア人の国外旅行について、簡単に市況をまとめてみました。
石油価格の下落およびルーブルの暴落、また周辺諸国との関係悪化など様々な要因が重なり、ロシア人観光客の外国渡航は減少を見せている昨今。特に、2014年初から続くウクライナとの紛争、2015年10月にエジプトのシナイ半島で発生したコガルィムアヴィア航空機墜落事故(後にイスラム過激派によるテロ行為と断定)、翌11月に発生したロシア軍機撃墜事件を発端とした対トルコ関係の緊張により、渡航自体が制限されたこともあり、ロシア国内の旅行業者はもちろん、ロシア人観光客が重要な収入源であるエジプト、トルコの旅行市場は大きな痛手を被りました。
観光を目的としたロシア人の外国渡航件数の推移を見てみましょう。2014年には約4,300万件であった外国渡航件数は、2015年に約3,400万件、2016年には約3,200万件と、対外的な関係悪化と連動し、段階的な減少が見られました。なお、2017年第一四半期(1~3月)の渡航件数は約670万件となり、2016年同時期の536万件から25%増と、回復の兆しが見られます。その内訳は以下図のとおりです。
図表2は第一四半期の渡航件数であり、夏のバカンスシーズンの渡航については反映されていませんが、ロシア・ツアーオペレーター協会(ATOR)の報道によると、2017年夏におけるロシア人観光客の渡航先として、トルコが第一位となったということです。2015年11月にトルコ領空で発生した、ロシア軍機の追撃事件を理由に、ロシア政府は経済制裁ともに、トルコへの渡航制限措置を発動していましたが、2016年6月にエルドアン・トルコ共和国大統領が追撃事件についてロシアのプーチン大統領に謝罪したことで二国関係には一定の落ち着きが見られ、トルコへの渡航解禁につながっています。解禁後の渡航件数の成長率は100%を超え、ロシア人旅行者の間での根強い人気がうかがえます。
元来トルコはロシア人の間で国外の観光地として絶大なる人気を博しており、2015年夏場の売り上げのうち、60~65%という非常に大きなシェアを占めていますが、その人気の理由として、第一にビザが不要であること、モスクワやサンクトペテルブルグから飛行機で3時間半程度と比較的近く、気候が温暖であること、歴史遺産のみならずビーチリゾートやショッピングスポットが充実しており、家族連れで楽しめること、また、トルコのホテルの多くが、大幅な早期予約割引プランを提供することが挙げられます。
一方、トルコとともに2014年、2015年の渡航先ランキングにおいてトップ5に名を連ねていたエジプトは、前述のコガルィムアヴィア航空機墜落事故により、ロシア政府が同国へ発着する航空便の停止および渡航自粛勧告を行っているため、ランキング圏外となってしまいました。とはいえ、図表3のとおり、エジプト直行便の復活を待ち望む声は多く、渡航解禁となれば以前のように主要渡航先に返り咲く可能性は高いといえるでしょう。
ちなみに、我らが日本は35位と、2位の中国、21位の韓国といった近隣諸国から引き離されている状況です。韓国は2014年よりロシアとの間にビザ免除協定を締結しており、観光やビジネスでの二国間の人的交流の幅は今後さらに広がりをみせるものと思われます。
また、ATORによると、昨年の観光市場における夏場の収益のうち30~35%を占めていたロシア国内旅行の割合は、2016年には約20%に減少しています。その理由としては、2016年末から2017年にかけて、原油価格およびロシア経済が、緩やかながらも回復基調にあることが挙げられますが、飲食やその他館内での全サービスが代金にコミコミとなっている所謂オールインクルーシブプランを提供する宿泊施設がロシア国内にほとんど存在しないことも、国内旅行離れの大きな要因であるとの見方もあります。実際ロシア国内のホテルの予約数は前年比で20~25%の減少が見られています。
ちなみに、オールインクルーシブプランにおいては、予約時に支払う料金のなかに、宿泊施設内での飲食料金や各種アクティビティへの参加料金があらかじめ含まれるため、利用客はその都度各種支払いに手間取る必要がなく、お財布なしでストレスフリーなリゾートライフを楽しめます。そういえば、数年前に筆者のロシア人の友人が初めて日本へ遊びに来た際、「このまえキューバでバカンスを過ごした時は、ホテルでの全サービスが料金に含まれていて快適だったのに、日本のホテルにはそれがなくて煩わしい」なんて愚痴をこぼしていたような・・・。まあ、よく食べ、よく飲む(元は必ずとりたい)ロシア人にとっては当然魅力的なのでしょう。もともと海外のリゾート地では比較的ポピュラーなシステムですが、最近では沖縄のビーチリゾートや北海道のスキーリゾートをはじめ、日本国内でもじわじわと浸透しているのだとか。
大渡 耕三
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