天然資源をめぐるロシアと周辺諸国

今回の記事では、主にロシアとウクライナおよび周辺諸国の関係性の天然ガスをめぐる関係性、そして日本とロシアのエネルギー資源をめぐる現在と今後の行く末について記していく。
現在、ロシアとウクライナは相互に貿易制限措置を課しており、2019年4月18日にはロシア政府がウクライナ向けに石油、石油製品、石炭、ガソリン、ディーゼル燃料を輸出禁止品目に指定した(JETRO)。一方、天然ガスに関しては、現在もウクライナを経由して欧州各国への輸出が継続されていく(日経新聞)。
さて、ロシアとウクライナ間で天然ガス輸出をめぐる大きな問題へと発展したのが2008年から2009年ガス供給停止問題である。ロシアはソ連時代からヨーロッパ向けに天然ガスを輸出しているが、その80%がウクライナを経由している。この2国間に端を発した問題がヨーロッパ最大のロシア産ガスの消費国であるドイツをはじめ、中東欧やトルコなどヨーロッパの多数の国に影響を及ぼす問題へと膨れ上がった。
事の発端は2008年末、ロシアのガスプロムはウクライナ側のガス滞納料金が約21億ドル(罰金を含む)に上ったことを受け、全額返済しなければ2009年1月1日からガスを止めると警告。ウクライナは2009年の1月1日に罰金を除いた滞納分約15億ドルを返済したものの、罰金の6億ドルの返済時期に関しては合意には至らず、1月1日にガス供給を停止されることとなった。この結果、ウクライナだけでなく、その供給の川下にあたるヨーロッパの各国にまで影響を及ぼすことになったのだ。最終的には1月18日、ロシアのプーチン首相(当時)とウクライナのティモシェンコ首相で2009年度分のガス供給価格に関しては20%の割引、2010年度以降はヨーロッパ諸国と同じ価格を支払うことで合意した。ウクライナはロシアの優遇措置の対象から外れたのだ。
出典 U.S. attempts to block Russian gas pipe to Europe likely to fail
それを受けて、供給の川下にあたるドイツ。今後ウクライナ経由だといつガスの供給を止められるか分からないということで、ノルドストリームの建設に至った。2011年にノルドストリーム1が完成、2020年現在はノルドストリーム2を建設中で、ドイツはさらにロシア依存を強めていくとされている。ノルドストリーム2の輸送能力は年間550億立方メートルで、現在のドイツのロシアからの天然ガス購入量と同程度。ドイツはすでに天然ガス、石油、石炭など全ての化石燃料輸入でロシアが最大の貿易相手国であり、今後ドイツはロシアからの天然ガス輸入量をさらに増やし、エネルギー依存の構造を深めようとしている。
一方、これに対しトランプ大統領はドイツのロシア依存を批判し、議会では複数の制裁を検討しているという報道があった。シェール革命により世界最大の天然ガス生産国になった米国は、天然ガス輸出が可能になり、アジアや欧州向けに天然ガス輸出を開始している。トランプ大統領の批判の背景には、欧州向けに米国産天然ガス輸出増の狙いがあるのだろう。
さらに詳しい記事はこちら⇒露宇のガスをめぐる関係の歴史(リアノーバスチ)
参考:ロシアのベラルーシの石油・天然ガスをめぐる係争について 本村眞澄(2007)
ロシアが急速に進めるガス供給ルート多様化の背景に迫る 原田大輔(2019)
【日本とロシアのエネルギー開発】
エネルギー関連で日本とロシアが密接に関わるのがサハリンプロジェクトだ。ロシア・サハリン島周辺エリアで石油・天然ガスを開発するプロジェクトで、世界の石油メジャーが多数参加している。サハリンの大陸棚に眠る膨大な量の石油資源は、20世紀前半からその存在が知られていた。しかし流氷に閉ざされる期間が長く、資源の採掘や運搬が困難であったことから、長きにわたり小規模な資源利用にとどまった。そこでソ連崩壊に伴い経済的に混乱していた時期、ロシア政府は外国資本の導入を決め、石油・天然ガスなどの資源開発を進めることとなったのだ。図表出典
サハリンの採掘場の地図サハリンを囲む水域は、ロシア政府およびサハリン州地方府によって、サハリンI〜VIという6つの大きな鉱区に分割されている。
現在、2021年に投資に関する最終決定がなされる予定で、2027年にはサハリン1から日本へ天然ガスが輸出されるという見通しがある。日本の天然ガス需要のうちの10%にあたる量がここから輸出される。今後日本がロシアからの輸入を始めていくにあたり、ロシアにエネルギーを頼りすぎると、突然ロシア側の都合で輸出が中止されるといったような事態も想定される。こうした資源の政治利用はロシアの常套手段であるからだ。あまりにロシアに依存しすぎるのは得策ではないだろう。出典 Сжиженный природный газ «Сахалина-1» придет японским потребителям в 2027 г.
資源大国、ロシア。今後、ロシアが資源の呪い(recourse curse)にどのように打ち克ってゆくかが注目される。資源は商品なのか、はたまた政治的な道具なのか。今後のロシアにも目が離せない。

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