日露の遺伝子組換え食品事情
今回は日本とロシアの遺伝子組換え食品事情について紹介します。
1、遺伝子組換え食品について
まず、そもそも遺伝子組換え食品とは一体どのような食品のことを指しているのでしょうか。消費者庁のホームページ(注1)によると、遺伝子組換え食品は、他の生物から有用な性質を持つ遺伝子を取り出し、その性質を持たせたい植物などに組み込む技術を利用して作られた食品を指しています。
注1;消費者庁「遺伝子組換え食品」
遺伝子組換え食品の主なメリットとデメリットは以下の通りです。
〇メリット
・従来の品種改良と比べて、求める特性を早く持たせることができる点。
・害虫に強い特性や除草剤に強い特性を持たせることによって、農作業の効率化が期待される点。
・農作業の効率化による作物の収穫量の増加は食糧問題の解決に寄与する点。
〇デメリット
・安全性が保障されておらず、人体に害を与える可能性がある点。
・環境に悪影響を与える可能性がある点。
2、遺伝子組換え食品を巡る日露の事情
⽇本において⾷⽤・飼料⽤として使⽤することを⽬的とした遺伝⼦組換え農作物の商業栽培は不可能ですが、遺伝⼦組換えバラのみ商業栽培が可能となっています。遺伝子組換えバラの中ではサントリーが開発した青いバラ(注2)が有名です。
注2;サントリー「「青いバラ」への挑戦」
https://www.suntory.co.jp/sic/research/s_bluerose/story/
また、ロシアでは専門家による遺伝子組換え食品の調査と研究は可能となっています。
次に、遺伝子組換え食品を巡る国際的な枠組みに両国が含まれているかを比較しました。
生物多様性条約とカルタヘナ条約に関しては外務省の生物多様性のページ、名古屋・クアラルンプール補足議定書に関しては国会提出条約・法律案のページに詳細が載っています。
・外務省「生物多様性」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/seibutsu_tayosei/index.html
・外務省「バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書の責任及び救済に関する名古屋・クアラルンプール補足議定書」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ila/st/page23_001941.html
3、日露の遺伝子組換え食品表示規制
まずは、日露のラベル表示の違いから説明します。日本では、遺伝子組換え食品が含まれている旨を以下のように文字で表します。
一方、ロシアでは以下のような遺伝子組み換え食品を使用していることを示すマークを、ユーラシア関税同盟で定められた形式で商品に表示する必要があります。
最後に遺伝子組み換え食品の表示規制について表にまとめました。
注3;分別生産流通管理が適正に行われた場合でも、遺伝子組換え農産物の一定の混入は避けられないことから、分別生産流通管理が適切に行われていれば、このような一定の「意図せざる混入」がある場合でも、「遺伝子組換えでない」旨の表示をすることができるとしている。
遺伝子組換え食品の表示規制は日本よりもロシアの方が厳しいと言えます。日本は遺伝子組換え食品であっても表示義務の対象外となるものが一定数見受けられますが、ロシアでは全ての遺伝子組換え食品に表示義務があります。特に注目すべき点は意図せざる混入率の上限です。日本は5%となっていますが、これは世界的に見ても緩い水準です。韓国は3%、オーストラリア・ニュージーランドは1%、EU圏内では0.9%の上限が設けられているからです。よって、ロシアはEU並みに厳しい水準を採用していることが分かります。
4、今後の状況について
現在、ロシアでは遺伝子組換え食品の輸入手続きを簡素化する動きがあります。この輸入手続き簡素化の目的は飼料の輸入量を増やすことで畜産業を活発化させることであり、ミシュースチン首相が中心となって進めています。この動きに対して、農業省は支持を表明していますが、反対している政治家もいます。ロシアの遺伝子組換え食品を巡る情勢は今後変化する可能性が高い為、注視していく必要があるでしょう。
〇参考ホームページ
・SMART AGRI「「遺伝子組み換え」の安全性とは? なぜ賛否両論を巻き起こしているのか」
https://smartagri-jp.com/management/114
・農林水産省「遺伝子組換え農作物の管理について」(PDF)
https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/carta/zyoukyou/attach/pdf/index-35.pdf
・名古屋市「遺伝子組換え食品の表示」
http://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/page/0000100580.html
・消費者庁食品表示企画課「遺伝子組換え食品の表示制度をめぐる情勢」(PDF)
・Convention on Biological Diversity “List of Parties”生物多様性会議「参加国リスト」(英語)
https://www.cbd.int/information/parties.shtml#tab=0
・ТР ТС 022/2011 Технический регламент Таможенного союза “Пищевая продукция в части ее маркировки” (с изменениями на 14 сентября 2018 года) 「食料品の表示に関する関税同盟の技術規則(2018年9月14日に修正)」(ロシア語)
http://docs.cntd.ru/document/902320347
・THE DAILY NEWS
Простыми словами: Запрет ГМО в России
THE DAILY NEWS「ロシアで遺伝子組換え食品が禁止された」(ロシア語)
https://www.dairynews.ru/news/prostymi-slovami-zapret-gmo-v-rossii.html
・Путин подписал закон о запрете производства ГМО-продукции в России
タス通信「プーチン大統領はロシアで遺伝子組換え食品を生産することを禁止した法律に署名した」(ロシア語)
https://tass.ru/ekonomika/3431904
・Yandex Zen
Мишустин разрешил ввоз ГМО в Россию, а Минсельхоз поддержал, несмотря на то, что губернаторы возражали
Yandex Zen「知事の反対にも関わらず、ミシュースチン首相はロシアへの遺伝子組換え食品の輸入を許可し、農業省はこれを支持した」(ロシア語)
・Минсельхоз поддерживает упрощение допуска ГМО-продукции в Россию
タス通信「農業省はロシアへの遺伝子組換え食品輸入簡素化を支持している」(ロシア語)
https://tass.ru/ekonomika/8496973
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