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資源大国ロシア ロシア人消費者が受ける恩恵は? ~ガソリン編~

資源大国ロシア ロシア人消費者が受ける恩恵は? ~ガソリン編~
さて、前回の光熱費編に続き、今回の記事ではロシアのガソリン事情について取り扱う。
日本とは違い、ロシアでは石油が取れることで有名だが一体ロシア人はどんな恩恵を享受しているのだろうか。
ガソリン価格
 ロシアではガソリンが、АИ-92、AИ-95、АИ-98、ДТ(ディーゼル)の4種類でオクタン価別に販売されている。
オクタン価とは、ガソリンのエンジン内での自己着火のしにくさ、ノッキングの起こりにくさを示す数値のことで、 オクタン価が高いほどノッキングが起こりにくいといわれている。日本ではオクタン価が89以上をレギュラーガソリン、96以上をハイオクガソリンと定めており、ロシアではオクタン価の設定が日本より高くなっている。

出典 Индекс топливных цен «Петрол Плюс»

 

こちらがロシア全体のガソリン平均価格の過去1カ月の推移を表すグラフだ。最近、石油価格が大暴落したのが4月20日前後だが、ガソリンの価格には全く影響がみられない。6月17日現在の1リットルあたりのガソリン価格は日本円でАИ-95が約66円、 АИ-92が約61円、 ДТが約68円ということだ(1ルーブル=1,45円)。参考までに世界のガソリン価格(English)についての最新データも載せておく。

出典 Индекс топливных цен «Петрол Плюс» по регионам

過去3年間のガソリン価格のグラフ。2018年の5月ごろに大きく価格が上昇してるが、この原因に関してロシアのエネルギー省のアレクサンドル・ノバク氏によれば原因はインフレ、ロシアの新聞社ベードモスチでは季節的な理由だとしているが、具体的に説明された記事は見つからなかった。石油価格のチャートとの相関はみられなかった。以上より、石油価格は国民の生活に全く直結しないということがわかった。

出典 Розничные цены на бензин АИ-95 в регионах России. 1 квартал 2018

こちらはロシア全土のガソリン価格を都市ごとに色分けした地図である。どの地域がガソリン価格が高いのかがわかる。2020年5月現在の都市ごとのガソリン価格(1L)はモスクワで平均と比べ+1ルーブル、サンクトペテルブルで+0.25ルーブル、ウラジオストクで-0.05ルーブル。一方、世界で一番寒いといわれるサハ共和国のヤクーツクでは+11ルーブルほどになっている。物価の高いモスクワやサンクトペテルブルクなどの都市部のガソリン価格が必ずしも高いとは言えず、物価に起因するのではないようだ。こちらの記事によるとガソリンの価格は「季節」と「石油の精製場所からの距離」に依存するということだ。

ロシアのガソリンに関する興味のある方は読んでいただきたい ⇒ロシアにおける高オクタン価ガソリン市場及びその生産の見通し(ロシアNIS貿易会)

【ロシア車の燃費】

ちなみに、ロシアにも国産車があることをご存じだろうか。ロシア車のなかでもラダ(ЛАДА)社のgrantaという車種が昨年の販売台数が1番だったらしい。燃費はカウントの基準の違いこそあれど、13.8km/L~15.3㎞/Lとさほど良くはない。日本の販売台数1位であるトヨタのプリウスの燃費37.2km/L~40.8km/L比べると大きな差である。

出典 Расход топлива Лада Гранта

ここまで書いてみると、確かに、ガソリン価格は日本よりも安い。しかし、ロシアの平均的な収入を考慮すると生活費に占めるガソリン代金は決して小さいとは言えないかもしれない。

 

【考察】

ガスや電気の価格の値上がりはロシア国内のインフレよりも早いペースで進んでいるという(出典 Рост тарифов на энергию в России)。さて、ガソリン部分で前述した通り、ロシアでは家庭におけるエネルギー面で額面上の出費が少ないのは確かである。しかしながら、これが直接的な資源産出国の恩恵を反映しているかと問われればいささか疑問である。というのも、ロシアの平均的な月収は他の先進国に比べ後塵を拝するわけで、それに加えて地域間の格差も大きい。Federal State Statistic Serviceによるとロシアの平均月収は46,674ルーブル/月。しかしながら、平均というのはご存じの通り極端に高い一部のデータが全体の平均を押し上げてしまうので実状に即していない場合が多い。

出典 筆者作成

そこで、客観的な指標として適切だと考えられる中央値(メジアン)を用いて月収の中央値の上位下位を10都市まとめた表を作成した。ロシア全土の月収の中央値は34,335ルーブル(49,800円)/月。この表から考えると、ことロシアにおいてはいくら安いとは言え、光熱費もある程度の割合を占めるだろう。ロシア第2の都市で物価もロシアの中では高いといわれるサンクトペテルブルが、給与水準では10位にランクインするのは意外だった。

出典 ТОП-10 городов России с самыми низкими и самыми высокими зарплатами

こちらはロシアの給料の中央値を年ごとに表した図である。この地図からもわかる通り、大都市よりもシベリア(真ん中やや右寄り)の給与が高くなっている。その理由はそもそも売っている商品の値段が高いから。その土地までの輸送コストがかさむためどうしても値段が高くなる。そうした高いものを買うためには必然的に高い給料が必要だということだろう。またソ連時代から北部地域の労働者を対象に気候条件や環境を鑑みて、政府から補助金が支払われている(出典)。高齢者の年金も当該地域では増額されているもである。

余談ではあるが、ロシアの特徴として、経営者側が諸経費を低く抑えるために見かけ上の給与を少なくする「グレーの給料」というものがある。額面上とは別に手渡しで直接受け取る場合があり、4人に1人の労働者がこれを受け取っているという。ちなみにロシア全体の最低賃金の平均は(2020年)は12,130ルーブル/月(17,600円程度)、また年金の平均受給額(2018年)は13,383ルーブル/月(19,400円)ということだ(出典 Доходы населения России )。

以上、前回と今回の記事で見てきたようにロシアは資源大国でありながら、日本と比べるとエネルギー関連の値段は安いが、ロシアの給与水準を考慮に入れると必ずしも安いとは言えないというのが現状のようである。消費者としてはその恩恵を受けているとはいい難いだろう。

 

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