資源大国ロシア ロシア人消費者が受ける恩恵は?~光熱費編~
言わずと知れた資源大国、ロシア。
化石燃料の埋蔵量、産出量、輸出額では世界のトップクラスを誇る。
埋蔵量:石油6位(2018)、天然ガス1位(2018)、石炭2位(2018)
産出量:石油3位(2018)、天然ガス2位(2018)、石炭6位(2018)
輸出額:石油2位(2018)、天然ガス1位(2018)、石炭3位(2018)
では一体ロシア人はその恩恵をどのように享受しているのだろうか。前回は水道について記事を書いたが、今回はロシアの電気料金、ガス料金の2点に着目して日本と比較しながら記事を書き進めてゆく。
私がロシアで生活していて気づいたことの1つに、一般家庭のキッチンではガスではなくIH(電磁調理器)を使っている場合が多いということがある。ペテルブルク市内では一般家庭に限らず、レストランやカフェでもガスではなく電気を使っている。ガスに変えようにも特別な工員が必要で、その工賃が高いらしい(レストラン店長談)。現在では、都市部を中心に安全上の理由からIHを使うことが多くなってきた。しかしながら、電気よりガスの方が安いため、古い家では未だにガスを使い続けることが多いそう。その結果、大規模なガス爆発の事故もしばしば起こるという。出典 В домах какой высоты не ставят газовые плиты?
【電気料金】
出典 筆者作成
出典 新電力ネット
ロシア・サンクトペテルブルクの電気料金。上の表では、ロシアには複数のレートがあるがそのうち2つ、料金の価格体系が一定であるシングルパターン、昼(7:00~23:00)と夜(23:00~7:00)で時間によって料金体系が変わるパターンの過去5年間の料金をグラフ化した。下の図表が日本の1kWhあたりの平均販売価格である。ロシアの電気料金は日本と比べかなり安いことが分かる。また、EU圏内の国と比べると、EU平均価格が6.91円/kWh、ドイツ5.28円/kWh、スペイン8.20円/kWh、イギリスが最大で10.01円/kWhだという(出典)。
出典 エネ百科
こちらはロシアを含む主要国の発電構成比率(2017)。図表によるとロシアは日本同様80%以上を火力発電でまかなっている。また発電には天然ガスが多く使われており、ロシアでは発電に使う天然ガスを自国でまかなえるため、天然ガスの輸入コストがかかる日本と比べ大幅に値段が安いのである。これぞ資源保有国の強みである。また、近年ロシアは太陽光発電に力を入れ始めているようだ(出典)。
【ガス料金】
出典 筆者作成
出典 新電力ネット
上の図表がロシア・サンクトペテルブルクにおける100㎥あたりのガス料金。下の図表が日本の1㎥あたりの平均ガス販売単価。家庭用電気は日本の方がロシアより1.6~2.0倍程度料金が高いことがわかる。ロシアのガス料金は毎年上がっているが、やはり天然ガスのチャートとも相関がみられない。
ではなぜこれほどまでにガスの価格が上がっているのだろうか。ロシアではガス価格は連邦政府によって決定される。2007年、プーチン大統領は国内市場のガス価格を国際的なものにするためにロシアの消費者向けのガス価格の加速的に上昇させることを決定したのだ。ロシアではガスプロムが国内シェアの75%、GDPの8%とロシア経済の原動力の中核を担っており、プーチンはガスプロムの安定が国家経済の安定に直結すると考えているようだ。(出典)
一方、日本では原料費調整制度が適用されており、毎月の価格が変わるのは天然ガスや液化石油ガスの購入価格の変動を料金に反映させているからだ。原則として、貿易統計価格の3カ月平均値に基づいて価格が決定される。そのためロシアとは違い、日本では比較的な価格を消費者が払っているといえるだろう。
現在ロシアでは、エネルギー価格の値上がりが国内のインフレよりも早いペースで進んでいるという(出典 Рост тарифов на энергию в России)。確かに、ガス料金に至っては10年前に比べて2倍にまで増加している。ここからは公共料金の支払い方法を少し説明する。
ロシアでの公共料金には、大家が払う場合と自分で払う場合の2通りの払い方がある。
前者は簡単で、居住人数に応じた通年の固定額を毎月支払うのだ。私のアパートはこの方式が採られている。一方、自分で払う方は、毎月受け取る公共料金の明細書のバーコードをスマートフォンで読み取り、ズベルバンク(ロシア最大手の銀行)のアプリを通して、支払いを済ますことができる。
驚くべきことに、ロシアでは自己申告で使用料を記入し支払い料金が決まるのだ。例えば、この写真は水道のメーター。たいてい洗面台の下に隠れている。ロシアでは支払いが「お湯」、「水」、「下水」の3通りに分かれている。これらのメモリを読み取り、毎月申告するのだ。
この記事を通して、少しでもロシアの光熱費について知っていただけたなら嬉しい。次回は「石油とガソリン価格」について掘り下げてゆく。
文責 玉生(インターン)
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