3年間勤めた日本の大手IT企業を離れ、昨年の9月から、 サンクトペテルブルクを拠点に活動する「MTC Japan」という 会社に籍を置いている。MTC Japanは2012年に、自身、医 療の専門家である(手術室看護師、通称:オペ看の資格を持 つ)日本人が設立したロシア法人で、在留邦人向けの医療サ ポートなど医療分野を中心に、日ロ間のビジネスコーディ ネートやコンサルティングサービスを提供している。日本人3 名、ロシア人2名の小規模所帯だ。

今は、コンサルティング部門の事業として、ロシアの有望な IT関連のスタートアップ(いわゆるベンチャー)企業の技術を、 日本に進出させるプロジェクトに携わっている。

ロシアでは、スタートアップの登竜門といわれる「Startup of the Year」をはじめ、企業や大学が主催するスタートアップ向 けのコンテストが数多くあり、国としてもこの分野のバックアッ プに力を注いでいる。「ロシア版シリコンバレー」の建設を目 指してモスクワ郊外に設立された「スコルコボ」は有名だ。他 にも、シベリア最大都市ノボシビルスク郊外の「アカデムガラ ドク」(学術都市の意)には、2006年に巨額の国家予算を投じ てテクノパークが建設された。この「アカデムガラドク」のテク ノパーク「アカデミパーク」には、エンジニアリング、IT、ナノテ ク、バイオテクノロジー分野の企業約350社が入居している。

最近何かと話題に上ることも多いVR(仮想現実)技術の開 発も盛んだ。先日はチェリャビンスク(2013年に隕石落下で一 躍有名になった都市)のITパークに入居するVR技術の開発 チームと、7月にエカテリンブルグで開催されるロシア最大規 模の産業見本市「イノプロム」への出展について打ち合わせ をしてきた。本来は日本側の技術をプレゼンする場ではある が、今年は日本がパートナー国を務め、多くの日本企業が 出展を予定している好機だ。高い技術力はありながら、それ をなかなか最終製品にまで落とし込めないでいるロシアのスタートアップ企業は多い。必要なのは、資金力だったり、 デザイン力だったりと様々だが、彼らにとってブレイクス ルーのきっかけとなり、ロシア側の新しい発想が日本企業 にとっても利するところになればと思う。